項目 | 内容 | |
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事業名 | 難治性疾患実用化研究事業 | |
研究課題名 | ATR-X症候群に対する5−アミノレブリン酸による治験 | |
研究代表者名 | 和田敬仁 | |
研究代表者の所属機関名 | 京都大学大学院 医学研究科 | |
研究対象疾患名(または疾患領域) | ATR-X症候群 | |
研究のフェーズ | 臨床試験 | |
難病プラットフォームとの連携の有無 | なし | |
研究概要 | ATR-X症候群は、クロマチンリモデリング蛋白ATRXをコードするATRX遺伝子の機能喪失変異により、エピジェネティクスのメカニズムが破綻し、複数の遺伝子(ATRX標的遺伝子)の発現異常を来たす。その結果、重度の知的障害とαサラセミア(αグロビンの産生低下に伴う、βグロビンに対する量的不均衡による重度貧血)を主症状に、消化管症状、外性器異常症、骨格異常など多彩な症状を呈する。全例が重症心身障害児・者であり、生活全般において支援を必要とする。現在、根本的な治療法はなく、対症療法のみである。海外では200例以上、日本国内では約100例の患者が分子遺伝学的に確定診断されている。小児慢性特定疾病、および指定難病に登録されている希少難病である。 本研究代表者は、1994年より、本症候群の臨床研究および基礎研究に取り組んでいる。2009年からATR-X症候群ネットワークジャパンを立ち上げ、患者・ご家族と、医療者や教育者や基礎研究者など患者に関わる多職種が連携して活動を行ってきており、患者の治験へのリクルート準備は整っている。患者レジストリには、約50症例が登録されている。 2010年に、ATR-X症候群の病態として、ATRXタンパクがゲノム上の特別な構造(グアニン4重鎖構造:G4構造)に結合し、近傍の遺伝子発現を調節していることが明らかにされた。[Law MJ. Cell, 2010] そこで、G4構造に結合し安定化させる薬剤が治療薬の候補となると仮説を立て、本研究代表者は研究班(2014~2016年度AMED難治性疾患実用化研究事業『クロマチンリモデリング因子ATRXタンパクの異常により発症するX連鎖αサラセミア/精神遅滞症候群のアミノレブリン酸による治療法の開発(H26-委託(難)-一般-058) 』研究班(代表 和田敬仁))を立ち上げ、治療法の探索と開発に取り組んだ。(図1) 最初に、ATR-X症候群モデルマウスを用いて、G4構造結合作用を持つポルフィリン化合物TMPyP4の投与によりマウスの認知機能が改善されることを確認した。次に、G4構造結合作用をもつポルフィリン化合物を体内で生合成するプロドラッグとしての新しい薬理作用をもつ「5-アミノレブリン酸 (5-aminolevulinic acid; 5-ALA)」をモデルマウスに経口投与したところ、モデルマウスで見られる認知機能の低下が有意に改善した。5-ALA が細胞内で G4 構造結合能を持つポルフィリン化合物を生合成し、ゲノムのG4構造に作用することで、近傍の遺伝子発現の正常化を成すことを確認した。 [Shioda N et al. Nature Medicine, 2018]。また、5-ALAを栄養剤として摂食していた患者が有意語を獲得した症例を報告した。[Wada T. Congenital Anomalies,2020] 通常、有意言語の獲得が望めないATR-X症候群の患者の認知機能(社会性や言語能力)改善に対する、5-ALAの治療薬として適応可能を示唆するデータも得られた。 現在、ATR-X症候群の患者を対象とした、5−ALAによる医師主導治験(探索的試験)を行っている。 | |
レジストリ情報 | ||
難病プラットフォームとの連携の有無 | なし | |
対象疾患/指定難病告示番号 | ATR-X症候群/180 | |
目標症例数 | ||
登録済み症例数 | 50 例 | |
研究実施期間 | 2016年11月11日〜 | |
レジストリ名 | X連鎖αサラセミア・知的障害(ATR-X)症候群患者登録システム | |
レジストリの目的 | 自然歴調査;患者数や患者分布の把握;登録患者への情報提供;主治医への情報提供 | |
レジストリ保有者のPMDA面談経験の有無 | あり | |
臨床情報の調査項目 |
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調査項目 | ||
第三者機関からの二次利用申請可否 | 不可 | |
レジストリの企業利用について | 企業が利用することについては、患者の同意を取得していない | |
二次利用申請を受けた場合の対応方法 | ||
レジストリURL | ||
バイオレポジトリ情報 | ||
なし | ||
担当者連絡先 | ||
京都大学大学院医学研究科ゲノム医療学講座 和田敬仁 wadataka●kuhp.kyoto-u.ac.jp |
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