項目 | 内容 | |
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事業名 | 難治性疾患実用化研究事業 | |
研究課題名 | 生体ネットワークの操作による多発性硬化症の病態制御 | |
研究代表者名 | 田辺章悟 | |
研究代表者の所属機関名 | 国立精神・神経医療研究センター | |
研究対象疾患名(または疾患領域) | 多発性硬化症 | |
研究のフェーズ | 病態解明研究 | |
研究概要 | 多発性硬化症 (Multiple sclerosis: MS)は中枢神経系の各所に炎症性の病変が形成される自己免疫性の神経難病である。中枢神経系の自己抗原を認識する免疫系細胞が中枢神経系に浸潤し、炎症を引き起こす。この炎症により、髄鞘の脱落(脱髄)や軸索変性が誘導されて四肢の麻痺や視覚障害などの神経症状を呈する。現在存在する治療薬は免疫系の抑制を標的にしているが、治療効果をもたない症例が多くある。これらの症例報告から、MSの治療には免疫系の抑制だけでは不十分であり、MS患者に対して治療範囲を拡大するためには、免疫系の抑制とは異なった作用メカニズムを有する新たな治療法の開発が必要である。 近年の研究から、脳神経疾患では他臓器との連携による全身性の生体ネットワークが病態形成に関わることが明らかになってきた。申請者はこれまで、免疫系細胞が中枢神経系の傷害と修復に関与する分子メカニズムを解明してきた (Tanabe et al., Cell Rep., 2014; Tanabe et al., Nat. Neurosci., 2018)。研究を行っている中で、MSのモデル動物では心拍数や消化機能など臓器の挙動に変化があることに着目した。今までの知見や申請者自身の研究結果から、多発性硬化症では病的変化を受容した臓器が脳に情報を伝達し、生体応答を発信して病態を制御しているという生体ネットワークによる多発性硬化症の病態形成モデルを着想した。迷走神経の一部であり、節状神経節に細胞体を持つ神経細胞群は臓器感覚を受容して情報を脳へ伝達する。多発性硬化症では、臓器の挙動が変化していることから、臓器感覚情報の変化は脳へ伝達されており、その情報が免疫系やグリア細胞を通じて病態を制御していることが考えられる。本研究では、臓器感覚情報を伝える神経の活動を操作し、多発性硬化症のモデル動物における病態進行への影響や臓器感覚が病態を規定するメカニズムを明らかにする。節状神経節ニューロンの神経活動操作を通じて病態変化を解析するとともに、節状神経節を構成する神経細胞群から病態に関与するニューロンを同定する。さらに、どの臓器のどのような臓器感覚が病態に関与するのかを病的変化に伴う臓器の挙動変化を解析することで明らかにする。多発性硬化症における生体ネットワークの変化は新たな治療標的になる可能性がある。本研究を通じて臓器感覚情報の操作が多発性硬化症に対する新たな治療標的であることを示し、新規治療法開発へと繋がる基礎的研究基盤を形成する。 | |
レジストリ情報 | ||
なし | ||
バイオレポジトリ情報 | ||
なし | ||
担当者連絡先 | ||
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