項目 | 内容 | |
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事業名 | 難治性疾患実用化研究事業 | |
研究課題名 | オミックス解析による遺伝性網脈絡膜疾患、家族性緑内障、先天性視神経委縮症の病因・様態機序の解明 | |
研究代表者名 | 岩田岳 | |
研究代表者の所属機関名 | 国立病院機構東京医療センター | |
研究対象疾患名(または疾患領域) | 網膜色素変性、黄斑ジストロフィ、その他遺伝性網膜疾患、遺伝性視神経委縮症、家族性緑内障 | |
研究のフェーズ | 病態解明研究;ゲノム・オミックス解析研究 | |
研究概要 | ヒトは情報の約8割を視覚情報に頼っており、特に光に反応する視細胞が存在する網膜への障害は重篤な視機能低下をもたらす。視細胞が障害される遺伝性網脈絡膜疾患の多くは希少難病であり、5千人から数万人に1人の頻度で発症する。病気の進行を遅延あるいは治療することは現在困難である。また、家族性の緑内障や視神経委縮症は網膜神経節細胞や網膜グリア細胞などの障害によって発症する。遺伝性網脈絡膜疾患には網膜色素変性、黄斑ジストロフィ、錐体杆体ジストロフィ、先天夜盲症など36疾患が含まれ、正確な診断には眼底像、網膜断層像、自発蛍光像、視野、網膜電図などの検査を必要とする。すでに欧米での研究によって270以上の病因遺伝子が明らかにされており、診断率も約60%である。日本人の患者家系を対象とした我々の解析では2011年には17%、2019年には53%まで向上している。遺伝子解析の結果、日本人患者の約7割は未知遺伝子変異によって発症していることが明らかにされている。すなわち、日本人は、この分野で先行する欧米人とは異なる遺伝子変異によって発症してことになり、診断や治療に関して日本独自の体制が求められている。 本研究では1,434家系、2,656検体(2019年10月1日)を収集し、2,010検体の全エクソーム・全ゲノム解析を行い、日本人家系の約半数の遺伝子変異を明らかにすることができた。この分野で先行する欧米人の既知遺伝子変異が3割の家系でしか検出されておらず、日本人は欧米人と異なる遺伝子変異によって発症していると考えられる。 解析された家系の約半数はエクソン領域に遺伝子変異が検出されず、遺伝子外の領域に病因があると推測される。遺伝子外の領域ではノンコーディングRNAの転写が盛んに行われてことから、ヒト網膜のNET-CAGE解析を行い、23,883の網膜特異的な未知エンハンサー領域を同定して、遺伝子外のゲノム変異と疾患との相関を解析中である。 解析された家系の約11%に当たる約120家系については新規病因遺伝子による発症が予測され、これを証明するための変異体タンパク質の機能解析が、プロテオーム解析、ノックインマウス、患者iPS細胞などを用いて行われている。変異体タンパク質とのタンパク質間互作用の解析によって発症機序の分子メカニズムが明らかにされた。 遺伝性網膜疾患の病態機序の解明や治療法の開発に必要な動物モデルを積極的に作製した。新規病因遺伝子については、CRISPR/Cas9によるノックインマウスを複数の遺伝子変異について作製し、TALENによるノックインカニクイザル(下澤律浩、医薬基盤、健康、栄養研究所、霊長類医科学研究所)も作製中である。 オールジャパン体制で臨むこの研究班には国内外の製薬企業から治験に関する問い合わせを多数受け付けており、2019年度中には難病プラットフォームeCatchデータベースによる患者の個人情報に紐づけされた症例情報と遺伝情報によって、治験、臨床研究への患者リクルート体制が完成する計画である。2020年には遺伝性網膜疾患に対する治験が東京医療センターで開始される。 | |
レジストリ情報 | ||
なし | ||
バイオレポジトリ情報 | ||
生体試料の種類 | 血漿・血清;DNA;iPSC | |
生体試料の登録例数 | 3000 | |
外部からの使用申請の受け入れ可否 | 可 | |
外部からの使用申請への対応 | 共同研究として受け入れ可能 | |
担当者連絡先 | ||
国立病院機構東京医療センター、岩田 岳、takeshi.iwata●kankakuki.jp |
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